推薦図書

“Journalism and Society”

  • 著者名 : Denis McQuail 著
  • 出版社 : SAGE
  • 出版年 : 2013年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2014 Vol.1
本書は,長年にわたって,英語圏のジャーナリズム教育・研究関連の著作を多数手がけてきたデニス・マクウェールの最新著作である。本書の狙いは,インターネットが張り巡らされ,ビッグデータが新たな情報空間を創出しつつある今日の社会環境の文脈に,20世紀前半にほぼ確立された感のあるジャーナリズムの原理原則論を当てはめ,様々な角度から再検討を加えることにある。 結果として,商業至上主義のメディア産業全般と,社会改良を目指すジャーナリズムの思想と行動を,一般社会がわかるように差別化することが重要であると説く。そのために,ジャーナリズム側が,自覚的にメディア産業とは異なる自らの責任について,継続的・積極的に説明していくこと,すなわちメディア・アカウンタビリティが必要であるとの主張が,従来よりも明確に展開されるものとなっている。 公情報を機密化する法整備の進展や放送分野への政治介入など,日本のジャーナリズム環境の厳しさを示す事例が増している。マクウェールらが提示してきたニュースメディアの責任論は,ジャーナリズムの機能分析に対するひとつの研究スタンスを提供しており,日本を対象とする場合にも参考となろう。
(別府三奈子教授/5F西開架)