推薦図書
『園部逸夫オーラル・ヒストリー:タテ社会をヨコに生きて』
- 著者名 : 御厨貴 編
- 出版社 : 法律文化社
- 出版年 : 2013年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2013 Vol.5
本書は,学者から裁判官に転身し,一度学者に戻りながら,ついには最高裁判事を10年間務められた園部逸夫先生が,その職を退かれた直後に,インタビュアーとの対話の中でそれまでの自身のキャリアーについて語ったものをまとめた,いわば個人史である。裁判官の業務や先生自身が関わった事件について語ったものが中心であるが,法的知識が充分でなくても理解でき,一般にはほとんど知られていない裁判官の職務や生活について知ることができるので,一読することを勧めたい。 私は一度,園部先生と近しくお話をさせて戴いた経験がある。非常に温厚で,リベラルな考え方の持ち主であり,本書もそうした先生の人柄がよく顕れている。 しかし,それだけではなく,例えば戦後,日本は戦前の終審裁判所である大審院を廃止し,アメリカの最高裁判所に倣って最高裁判所を設けたが,その元になっているアメリカで言う行政委員会,イギリスで言えば行政審判所を確立しないまま司法審査制度を取り入れたため,日本ではジャッジ・メイド・ローの考え方が欠如していることなど,日本の司法制度が抱える問題点についての鋭い指摘が所々にあり,法律を学習する際に参考になることが少なくないであろう。
(中村 進教授/3F西開架)
(中村 進教授/3F西開架)