推薦図書

『犯罪統計入門〔第2版〕犯罪を科学する方法』

  • 著者名 : 浜井浩一編 著
  • 出版社 : 日本評論社
  • 出版年 : 2012年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2013 Vol.2
犯罪「統計」に関する本なので数字や表・グラフがたくさん出てくる。とくに本書の大半を占める【第2部 犯罪の測り方】は,多数のデータをあげて数値の意味や見かたを説明しているので,文系あるいは法学部の学生にとっては多少の拒否反応が現れるかもしれない。でも,数字に抵抗を感じたときはその箇所はどんどん読み飛ばしてもかまわない。本書の要諦は【第1部 犯罪研究の方法】である。ここを叮嚀に読むと,数字やグラフの背景にあるものが見えてくるはずだ。公表されている犯罪統計とはどのようなものか,犯罪対策が打ち出されるときの根拠となる統計値は何かなど,こうしたことの意味をまず理解することが重要なのである。ここでは統計における妥当性と信頼性,科学的根拠(エビデンス)といった概念の重要性が説かれているのだが,日ごろ接している犯罪や犯罪統計に関する報道や,それに基づく刑事立法や犯罪対策が,科学でなく信仰にすぎないことがよく解る。さらに,本書が対象とする犯罪統計に限らず,さまざまな政策決定の根拠となっている統計の意味を知ることの大切さも見えてくるのではないだろうか。 立法や政策を真に論じなければならない法学部の学生にこそ,是非読んでもらいたいと思う。
(岡西賢治准教授/4F西開架)