推薦図書
『イギリス政治史話』
- 著者名 : 木下広居 著
- 出版社 : 時事通信社
- 出版年 : 1961年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2013 Vol.2
まさに「巻を措く 能わず(かんをおく あたわず)」という言い方に相応しい一冊だ。1961年に出版されているから,かなり古い本である。でも,法学部の学生諸君には,ぜひ読んでもらいたい。例えば,イングランド型君主制の特長や「国王 対 議会」の権力闘争(いわゆるイギリス革命),議院内閣制誕生秘話,さらには,ディズレーリとグラッドストンの性格の違いまで,現代イギリス政治の奥深さを理解する手がかりが,エッセイ調で分かりやすく書かれているからである。とにかく面白いし興味深い内容なので,簡単な年表などが手元にあれば,歴史嫌いの人でも十分読みこなせるだろう。 筆者の木下広居は,1902年熊本県生まれ。東京帝国大学法学部政治学科を卒業後,旧制松江高等学校教授を務め,戦後は参議院法制局調査課長などを歴任した。本書は,参議院法制局調査課長時代に書かれたものである。木下は1981年に没したので,本書にサッチャーの話は――当然だが――書かれていない。そのサッチャーも,今年4月,神に召された。木下がサッチャーやブレアを見たら,どのように描いたであろうか。興味は尽きない。
(渡邉容一郎教授/4F東開架)
(渡邉容一郎教授/4F東開架)