推薦図書

『政治哲学へ:現代フランスとの対話』

  • 著者名 : 宇野重規 著
  • 出版社 : 東京大学出版会
  • 出版年 : 2004年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2013 Vol.1
これまでのフランス的政治思想の対立は,「保守主義」対「社会主義」の枠組みが一般的とされてきた。しかし冷戦終結の頃からフランス政治思想研究の中に,アングロサクソン的リベラリズム研究が市民権を得つつある。と言ってこれまでもフランス思想界に「リベラリズム(自由主義)」の潮流がなかったわけではない。がしかし,フランス的文脈での理解のされかたでは,リベラリズムは「保守主義」を表象されるものと解され,それに対抗するものこそが「社会主義」であった。これがアメリカ的文脈でならば,「リベラリズム」は民主党(革新)の依拠する政治哲学であり,共和党の方は「保守主義」とされ,それぞれの思想の位相がフランスとアングロサクソンとの間で微妙な異なりを見せてきた。 こうしたフランスでの伝統的思想解釈に棹さすかのように,いま大きな潮流としてリベラリズムの再検討が始まっているのである。本書は多くの現代フランス政治学者たちの書を紐解きながら,「人権と市民権」,「共和主義と自由主義」などを平易に解説しながら,現代フランス政治哲学の位置づけを検討する好著である。是非ご一読を!! 
(藤原孝教授/4F東開架)