推薦図書
“Building the UK’s new Supreme Court: national and comparative perspectives”
- 著者名 : Andrew Le Sueur 著
- 出版社 : Oxford Univ. Press
- 出版年 : 2004年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2012 Vol.3
本書は2005年憲法改革法により新しく設置され,2009年秋より運用が開始された英国史上初の最高裁判所に関する本である。英国史上最初の最高裁判所が設置されると言っても,他の諸国からみればごく当たり前のように響き,今更目新しい興味は引かないかもしれない。けれど英国では中世から今日まで6世紀以上にわたって,また19世紀末の上告管轄権法が成立してから数えても,ゆうに130年以上に渡って,最高裁の機能は,独占的に貴族院の上訴委員会に委ねられてきた。しかし2005年法はその長い歴史に終止符を打ったのである。その意味でそれは画期的な決定であった。その現代的意味は何か。また,合衆国や日本の最高裁と比較してどこが類似していてどこが異なるのか,本書はそれを如実に考察し,叙述している。かつてバジョットは『英国憲法』のなかで「英国人の最高裁は,立法部という服の裏側に隠されているべきでない」と述べた。なぜなら「はっきり目に見える偉大な法廷であるべき」だからである。それが今日ようやく実現された。このことを本書は多角的かつ比較法的に考察している。
(加藤紘捷教授/6F西開架)
(加藤紘捷教授/6F西開架)