推薦図書
“A Paradise Built in Hell: the extraordinary communities that arise in disaster”
- 著者名 : Rebecca Solnit 著
- 出版社 : Penguin Books
- 出版年 : 2010年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2012 Vol.2
本書は,1906年のサンフランシスコ地震,1917年のハリファックスでの大爆発事故,メキシコシティの巨大地震,2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件,2005年のニューオリンズでのハリケーンと大洪水の災害を詳しく検証している。災害映画やマスコミは,災害に遭遇した一般市民をヒステリックで下劣な姿に描き続けているが,災害時に粗野な行動に出るのは,むしろ権力の座にある少数のエリートたちと,その発表をうのみにして報道するメディアだと本書は指摘する。
災害が起きると,人々は集まる。この集まりを暴徒とみなして恐れる人もいるが,多くの人はパラダイスに近い市民社会の体験としていることを本書は生き生きと描き出す。団結と利他主義と即時対応性は大半の人々に備わっており,災害時,人々はどうすべきかを知っているのだという。災害は,人々の立ち直りの早さや気前の良さ,危機対応能力を明白にしてくれる。さらに,人々とつながりたい,何かに参加したい,人の役に立ち,目的のために邁進したいという欲求がいかに深いものであるかをもみせてくれる。それにひきかえ,エリートは災害時には,人間は野蛮で危険だ,という思い込みからパニックを起こし,彼ら自身が自分の身や利益を護るために凶暴な行動を取る。だが,危機的状況においてパニックに陥るエリートは少数派であり,大部分の人々は協調性に富んでいることを事実に基づいて示している。東日本大震災での経験に照らしてみても納得のいく著作である。
(稲葉陽二教授/6F西開架)
災害が起きると,人々は集まる。この集まりを暴徒とみなして恐れる人もいるが,多くの人はパラダイスに近い市民社会の体験としていることを本書は生き生きと描き出す。団結と利他主義と即時対応性は大半の人々に備わっており,災害時,人々はどうすべきかを知っているのだという。災害は,人々の立ち直りの早さや気前の良さ,危機対応能力を明白にしてくれる。さらに,人々とつながりたい,何かに参加したい,人の役に立ち,目的のために邁進したいという欲求がいかに深いものであるかをもみせてくれる。それにひきかえ,エリートは災害時には,人間は野蛮で危険だ,という思い込みからパニックを起こし,彼ら自身が自分の身や利益を護るために凶暴な行動を取る。だが,危機的状況においてパニックに陥るエリートは少数派であり,大部分の人々は協調性に富んでいることを事実に基づいて示している。東日本大震災での経験に照らしてみても納得のいく著作である。
(稲葉陽二教授/6F西開架)