推薦図書
『日本公的年金政策史―1875~2009』
- 著者名 : 矢野聡 著
- 出版社 : ミネルヴァ書房
- 出版年 : 2012年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2012 Vol.2
本書は,明治8年から現在に至るまでの,日本の公的年金制度の形成過程を,体系的に著述したものである。特に昭和から論を起し,自民党政権から民主党政権へと政権交代が行なわれた平成21年までの,約70年にわたる公的年金制度の成立と,その政策遂行の変化の過程について,詳細な分析研究がなされている。その中にあって,諸外国の制度と比較して,独創性を有する我が国の国民皆年金や国民皆保険制度などが,如何にして成立し,展開されてきたのかを考察していることは注目される。そしてこれらの論証から,今日論議されている年金制度改革が,より活発となり充実したものとなることを,著者が期待していることは,論の端々から推測できる。なお,本書は,平成24年の国際文化表現学会賞を受賞したが,その受賞理由は,公的年金それ自身を総合的かつ体系的に通史として捉え研究した初出の研究書であるからであり,今後の公的年金に関する研究書の基本書となり得る労作であると評価されたからにほかならない。本学矢野聡教授の著作であり,大冊ではあるが学生諸君にとって格好の書であるので,ここに推薦図書としたい。
(小林忠正教授/5F東開架)
(小林忠正教授/5F東開架)