推薦図書

『近代日本司法制度史』

  • 著者名 : 新井勉・蕪山厳・小柳春一郎 著
  • 出版社 : 信山社出版
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2011 Vol.2
本書は,明治初年から現在に至るまでの日本の司法制度の形成過程を体系的に著述したものである。現行実定法が定める司法制度,すなわち第四編「昭和憲法下の司法制度」(新井勉教授担当執筆)は,現在の司法制度を考察することにほかならないが,この平成・昭和時代の司法制度はその大綱において大正時代からの連続であり発展である。さらに大正時代の司法制度はその大綱において明治時代からの連続であり発展である。したがって歴史的形成に関する認識はきわめて重要であり不可欠なものである。言うならば現在の司法制度のあり方は,近代日本の司法制度の形成過程との関連で理解されることとなる。しかもその著者は,本学の新井勉教授そして独協大学の小柳春一郎教授の法制史研究者と,元裁判官の蕪山厳弁護士の裁判実務経験者との共著であり,研究者と実務経験者の共同作業によって,学問的高水準は維持されて,「一冊の書物で近代日本の司法制度の展開を辿るものであり,『裁判所百年史』などの出版物を除けば,これまで試みられたことがない」(本書はしがき)とする,きわめて意欲的な労作である。また本書は,二色ずり,難字・氏名等にはルビが振られ,巻末には年表を添付するという,きわめて読みやすく,理解しやすい形式をとっていて,学生諸君にとっては恰好の書であるので,ここに推薦図書としたい。 
(小林忠正教授/4F西開架)