推薦図書
『要説:日本の財政・税制』
- 著者名 : 井堀利宏 著
- 出版社 : 税務経理協会
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2011 Vol.2
21世紀に入った現在でも,日本経済は低迷しており,国民の多くは閉塞感の中にある。しかし,日本経済はストックレベルでは,世界の中でも有数の経済水準を誇っているし,平均的な国民の生活レベルでも先進諸国のなかで豊かなものである。本書は,財政学の入門書である。しかし,我が国の現状を踏まえながら政策的に議論しており,財政問題の優れた啓蒙書にもなっている。本書は次の3点を中心に議論している。第3は,「大きな政府」と「小さな政府」という基本的な対立軸を中心に,財政学の考え方を整理している。そして筆者は,痛みなき財政再建路線は危険であるという。第2は,1997年から財政構造改革がスタートしながら,結局は景気最優先のケインズ政策へと軸足が変化し,財政構造改革が中途半端に終わってしまったという。第3は,本書のタイトルからもわかるように,我が国の税制についてかなり詳しく論じている。我が国の中心的な税目である所得税,法人税,消費税について,それぞれⅠ章ずつ割り当てて,その概要を説明するとともに,その経済的な効果や,改革に関する諸問題を包括的に取り上げている。さらに本書では,従来,多くの財政学の書物では論じられていない目的税について議論している。最終章では,少子高齢化のもとでの財政・税制について,幅広い視点から議論している。
(高木勝一教授/5F東開架)
(高木勝一教授/5F東開架)