推薦図書
『マックス・ウェーバーの社会学 「経済と社会」から読み解く』
- 著者名 : 牧野雅彦 著
- 出版社 : ミネルヴァ書房
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2011 Vol.1
社会学の黎明期の主要人物としてデュルケームやジンメル,マルクスなどと並び称されるウェーバーは,近代の資本主義を発展させた原動力を,カルヴィニズムにおける宗教倫理から産み出された世俗内禁欲と生活合理化であると捉え,当時のマルクス主義唯物論の反証と目される『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』がよく知られているが,その著とともに彼を代表するのがこの『経済と社会』である。彼の学問の基本的立場は「歴史主義」で,具体的な歴史的事象の個性的特質とそれが形成された因果連関を解明することに主眼を置いていた。本著作はその概念整理の作業や比較分析のためのもので,そこで何か壮大な理論を展開したり,どの社会にも妥当する一般理論を提示することを意図したものではなく,未完成のままの,執筆時期の異なる草稿を遺稿として纏めたものである。このために著者も言うように,彼がそこで何を問題にしようとしていたかを読み解くのは非常に難しい。本著はその著作を近代国家の特質と形成過程で,当時の国家学・法律学の論争的文脈の中で読み解きながら,彼の社会学が何を問題にしようとしていたのかを明らかにしようとしたものである。具体的には,彼の社会学理論を詳述しながらドイツの国家学や法律学にも言及して,ドイツ政治史・法制史の議論を丹念に考察し,そのなかにウェーバーを位置づけていくという手法をとっている。その意味で本著は,社会学のみならず法制史や法思想史に関心ある読者にも興味を引く1冊といえる。
(池田勝徳教授/5F東開架)
(池田勝徳教授/5F東開架)