推薦図書

『戦争の思想史 : 哲学者は戦うことをどう考えてきたのか』

  • 著者名 : 中山元著
  • 出版社 : 平凡社
  • 出版年 : 2025年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2025 Vol.3
本書は,古代から現代に至るまでの,戦争をめぐる思索を丹念にたどった一冊です。アウグスティヌス,マキャヴェッリ,カント,ヘーゲルといった哲学者だけでなく,ナポレオンやクラウゼヴィッツ,レーニンといった軍人・政治家の議論も取り上げ,戦争思想の系譜を通史的に整理しています。戦争は単なる抽象的な理念ではなく,生々しい歴史的現実として私たち人間に立ちはだかってきました。あるべき社会像が実現しにくいのとは対照的に,戦争は忌避されながらも繰り返し人類史の中へ現れてきたのです。そのため,戦争論はユートピア的な思弁と異なり,現実主義者であっても避けて通れない哲学的テーマであり続けています。本書は,平和思想や正戦論といった大きな主題を分かりやすく描き出し,難解になりがちな議論を親しみやすく提示しています。戦争と平和の問題が再び私たちの社会に影を落とす現代において,「なぜ人は戦うのか」「戦争はいかに正当化されてきたのか」という問いを考えるための手助けとなるでしょう。

(出雲孝教授/1F新着図書コーナー 391.1||N 45)       ※赤字をクリックでOPACにつながります