推薦図書
『憲法概説』
- 著者名 : 小嶋和司 著
- 出版社 : 良書普及会
- 出版年 : 1987年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2016 Vol.4
安全保障法制をめぐる喧噪から一年が過ぎた。憲法学者の「違憲」発言で一気に炎上し,「憲法守れ」と批判された「民意」無視の安倍政権は,参院選で勝利。憲法改正発議に必要な三分の二の議席を確保。次は緊急事態条項の導入による改憲発議か。「立憲主義」破壊の大合唱が聞こえてきそうだ。そんなご時世だからこそ,読んでもらいたい一冊。その一節を紹介しよう。
「国家が危急存亡の岐路におかれ,憲法典の規定を遵守するなら,国家の存立も保ち難いと考えられることがある。・・・なお憲法典の規定にしたがうなら国家の存立さえ失われると判断される場合,政権担当者はどうすべきか。ここに『国家緊急権』とよばれる考え方があり,国家にとって最も重要な価値にしたがうべきものとする。これについて,憲法典は『国の基本法』であるから,憲法典がそれを容認しないかぎり,それをなしえないと考えることは,憲法典の本質的性格を誤認している。」(34頁)
著者の指摘する「憲法典の本質的性格を誤認」した憲法解釈が横行していないだろうか。憲法典(憲法)と国家という憲法学の根本問題への思索に読者を導く憲法解釈学の名著であろう。ただし,『芦部憲法』とは違って国家試験向きではない。
*著者(故人)は,戦後の憲法学の基礎を築いた宮沢俊義門下。芦部信喜教授の兄弟子。日本大学法学部図書館にはその貴重な蔵書を収めた小嶋文庫がある。
(東 裕教授/4F西開架)
「国家が危急存亡の岐路におかれ,憲法典の規定を遵守するなら,国家の存立も保ち難いと考えられることがある。・・・なお憲法典の規定にしたがうなら国家の存立さえ失われると判断される場合,政権担当者はどうすべきか。ここに『国家緊急権』とよばれる考え方があり,国家にとって最も重要な価値にしたがうべきものとする。これについて,憲法典は『国の基本法』であるから,憲法典がそれを容認しないかぎり,それをなしえないと考えることは,憲法典の本質的性格を誤認している。」(34頁)
著者の指摘する「憲法典の本質的性格を誤認」した憲法解釈が横行していないだろうか。憲法典(憲法)と国家という憲法学の根本問題への思索に読者を導く憲法解釈学の名著であろう。ただし,『芦部憲法』とは違って国家試験向きではない。
*著者(故人)は,戦後の憲法学の基礎を築いた宮沢俊義門下。芦部信喜教授の兄弟子。日本大学法学部図書館にはその貴重な蔵書を収めた小嶋文庫がある。
(東 裕教授/4F西開架)