推薦図書

『世界史の一解釈』(オルテガ著作集)

  • 著者名 : オルテガ 著・小林一宏 訳
  • 出版社 : 白水社
  • 出版年 : 1998年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2016 Vol.4
オルテガといえば『大衆の反逆』という書名を思い浮かべる方も多いかと思います。ここで紹介するのは,それではなく,アーノルド・トインビーの『歴史の研究』を種にして,オルテガの行った12回の連続講義をまとめたものです。数少ない経験ですけれども,スペイン語を母語とする人は,英語を母語とする人に対して,激しい対抗心をもっているように思います。これもその一例といっていいでしょう。
“それというのも,彼はそこでエーゲ文明はギリシャ・ローマ文明の「漠然とした親」文明であると書いているからです。この漠然とした親というのは何を意味するのでしょうか。それはたとえば,ある人をさして彼はその息子の「漠然とした」父親であるというようなもので,このようなことはその人から適当な距離をおいてでも口にしない限り,たちどころに一発痛い目に会うことは免れません。これは実にみごとというほかはない歪曲であり,ドイツ人,フランス人の書いた本であれば,たとえ二流,三流のものであろうとも,これに類したばかなことは絶対に見られないと確信をもっていえます。(9講279ページ)”オルテガの感情の爆発ともいえる,論調はこれだけではありません。トインビーがなんと書いていたのか,冷静に調べてみようという気にさせる一冊です。
(髙橋 徹教授/3F東開架)