推薦図書

『永久平和論Ⅰ・Ⅱ』

  • 著者名 : サン-ピエール著 本田裕志訳
  • 出版社 : 京都大学学術出版会
  • 出版年 : 2013年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2014 Vol.1
ルソー,カント,クーデンホフ=カレルギーとあげれば,皆さんは「平和思想家」を連想されることでしょう。そうです,こうした平和思想家たちに大いに影響を与えた思想家がサン-ピエール(1658~1743)なのです。日本の学界ではあまり正面から取り上げられることがなかった(したがって忘れられた思想家)サン-ピエールの著作の本邦初訳が本書です。
18世紀フランス啓蒙思想の時代を生きた著者は,一流貴族出身のカトリック聖職者であり(したがってサン-ピエール師と呼ばれるのです),当時のフランスの学問的権威(一時アカデミー・フランセーズの会員でした)と,絶対王政の政治権力との中枢に近い位置に身を置きながら,反伝統的・革新的かつ世俗主義的思想傾向を持っていたのです。だからこそ,ヨーロッパのキリスト教諸国の君主・首脳たちが連合条約を締結し,これによって「ヨーロッパ連合」を設立するという構想を本書で述べているのです。現代EUの思想的原点は,このサン-ピエールにあったと言うべきでしょう。この時代の政治思想史や政治史を研究する方たちに大いに参考になります。学生時代にじっくりと取り組んでみる格好の文献だろうと思っています。
(藤原孝教授/4F東開架)