推薦図書

『哲学な日々 : 考えさせない時代に抗して』

  • 著者名 : 野矢茂樹 著
  • 出版社 : 講談社
  • 出版年 : 2015年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2024 Vol.1
自分や周りの人たち,人が生きる自然や社会,文化や時代,国や世界のこと……,そのあり方はどうなっていて,どうあるべきなのか。それは,人がこの世をうまく生きていくうえでぜひとも考えなくてはいけないはずの問いなのでしょう。なのに,いやだからこそ,ひとたびその問いに向き合い,腰を据えて考えようとすると,どうにも途方に暮れてしまう。どう問い,どう考えたらいいのかわからなくなってしまうのかもしれません。
人が生きるうえで一番大切なものとは何なのか,どうして自殺をしてはいけないのか……など,答えるのにむずかしいけど,けっして無視できそうにない問い。本書は,そうした問いにも目をそらさず真正面から向き合っています。
だからといって,ややこしい哲学的な議論が展開されているわけでもありません。前半には,大学での学びや教えについて思うこと,著者の日常のさまざまな出来事などが綴られた50のエッセイが収録されています。気楽に読める筆致でありながらも,読みすすんでいるうちに,いつのまにか自分の視野が広がり,柔軟になっているのに気づかされてくるでしょう。後半は,論理的な文章を書くために必要な心得や,自分とは別の人生を生きる他者を理解するとはどういったことか,存在への驚きから始まる哲学の出発点のあり方などが語り伝えられています。哲学のみならず,学問一般に求められる根本的な姿勢や醍醐味の一端を味うことができるはずです。
大学で,あるいは,これらから先の人生で何をどう学べばいいのか,その方向を探るための一つの指針になるのではと思います。
(岡山敬二准教授/3F東開架104||N 97b) ※赤字をクリックでOPACにつながります