推薦図書

『社会的なものを組み直す : アクターネットワーク理論入門』

  • 著者名 : ブリュノ・ラトゥール 著 ; 伊藤嘉高訳
  • 出版社 : 法政大学出版局
  • 出版年 : 2019年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2021 Vol.3
私達は自然(nature)と人間を区別しています。自然には微に入り細に入り観察・実験し客観的認識にまで仕立て上げます。人間には,自然支配を目指すこの認識だけではなく,特別な取り扱いを行います。チンパンジーが私達人間から排除されるのは生まれ(自然)によってですが,人間の間では何よりも人種・性別など生まれによる差別は禁止されます。人間も自然の一部ですが,自らを社会的生に負う限りにおいて文化(culture)を有します。伝統(文化)はその社会の内外で意味を異にしますが,物理(自然)法則はそうではありません(林檎の落下は誰にとっても同様)。人間であれば生物学的に(自然において)同一ですが,帰属する社会に応じて文化は異なります(文化の多様性は文化相対主義を帰結するとも限りませんが…)。自然と文化(社会)の二元論は,近代を,学知の近代的配分(自然科学と社会科学)を規定しています。
フランスの科学社会学者・人類学者のブリュノ・ラトゥールは,近代二元論への批判に基づいた新しい社会学を構想しています。ラトゥールの提示する社会は,人間を要素とする集合的実体ではもはやなく,任意の要素の結合的関係です。自然,文化,社会などの諸概念は決して自明なものではありません。
(吉澤 保准教授/法図5F東開架 361||L 35)