推薦図書
『外来種は本当に悪者か? : 新しい野生』
- 著者名 : 保城広至 著
- 出版社 : 草思社
- 出版年 : 2019年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2020 Vol.5
そもそも,長い時間軸でとらえると,在来種など存在しない。生態系は常に変化し続けて来た。また,人間の活動は広範に及び,この地球上に「手つかずの自然」など存在せず,それは「神話」に過ぎない。アマゾンの奥地でさえ,人間の営みによって生態系は変化して来たのだと言う。また,在来種が絶滅するのは,必ずしも外来種のせいではない。人間による環境破壊が原因であることが多く,たまたまそこに生命力の強い外来種が入って来て,定着するだけのことなのだと言う。
外来種が悪者のように言われるが,多くの外来種は新たな生態系を構築することに貢献し,むしろ生物多様性を実現している例が多い。ところが,環境保護の団体などは,問題を起こしている一部の種についてだけ声高に論じたて,しかも特定の地域の問題を,全世界の問題であるかのように非論理的に拡大解釈し,危機を煽り立てていることもある。また,この四半世紀,侵入生物学という学問分野が確立したが,特定の地域の特定の種に関する論文ばかりで,生物多様性に貢献している外来種という不都合な事例は,ほぼ無視されている。環境保護のための利権と結びついている例すら見られる。それはあたかも民族浄化のようなものであって,生態系浄化にほかならない。
環境問題は一神教的な物差しで,民族浄化のように論じられることが多い。こうした現状を見据えた際,多種多様な物指しの必要性,重要性に気付かせてくれる一書である。
(野口 恵子教授/7Fラーニングコモンズ)
外来種が悪者のように言われるが,多くの外来種は新たな生態系を構築することに貢献し,むしろ生物多様性を実現している例が多い。ところが,環境保護の団体などは,問題を起こしている一部の種についてだけ声高に論じたて,しかも特定の地域の問題を,全世界の問題であるかのように非論理的に拡大解釈し,危機を煽り立てていることもある。また,この四半世紀,侵入生物学という学問分野が確立したが,特定の地域の特定の種に関する論文ばかりで,生物多様性に貢献している外来種という不都合な事例は,ほぼ無視されている。環境保護のための利権と結びついている例すら見られる。それはあたかも民族浄化のようなものであって,生態系浄化にほかならない。
環境問題は一神教的な物差しで,民族浄化のように論じられることが多い。こうした現状を見据えた際,多種多様な物指しの必要性,重要性に気付かせてくれる一書である。
(野口 恵子教授/7Fラーニングコモンズ)