推薦図書

”England`s Treasure by Forraign Trade”

  • 著者名 : Thomas Mun 著
  • 出版社 : Macmillan
  • 出版年 : 1895年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2016 Vol.1
コロンブス以来の大航海時代には,国家と貿易に重きを置く重商主義の考え方が主流でした。
重商主義とは,16世紀から18世紀にかけて,西欧の絶対君主制において支配的であった経済思想とそれに基づく経済政策のことを言います。重商主義では,富は金や銀の貴金属であり,それらの蓄積こそが国力の増大だとする考え方を取ります。そのために国家は,税制優遇や補助金などで輸出を奨励し,関税によって輸入を抑制することで貿易黒字を生み出し,金・銀の流入を促進させました。そのために,多くの国では植民地主義や近隣窮乏化政策がとられたのです。
トーマス・マンは,本書で富の本質が金や銀であるという理由から,貿易差額こそが経済的繁栄の指標であると力説したのです。そのために,輸出が輸入よりも超過し,金や銀の流入が行われるように外国貿易を規制しました。安い原材料の輸入を行い,完成された輸入工業製品に保護関税をかけて国内産業を促進し,国内での雇用を最大にするため完成品の輸出を奨励し,賃金や価格を低く保つために人口増加などの政策を奨励しました。重商主義期の重要な1冊である。是非,読んでほしい書籍です。
(山口 正春教授/6F西開架)