推薦図書

『近代の政治思想:その現実的・理論的諸前提』

  • 著者名 : 福田歓一 著
  • 出版社 : 岩波新書
  • 出版年 : 1970年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2019 Vol.1
ベストセラーにもなったユヴァル・ノア・ハラリ「サピエンス全史」によれば,チンパンジーや他の旧人類とホモ・サピエンスを決定的に分けるのは,サピエンスが集団を一つにする虚構の物語を受け入れることができることだという。私たちが暮らす社会の法制度は,まさにそうした虚構の物語であって,こんにち憲法を頂点とするこの虚構の物語は立憲主義と呼ばれる。そして,この物語がどのような経緯で作り上げられたのかを丹念に解説するのが,本書である。
本書では,中世の身分制社会から宗教改革を経て近代政治思想が形成され,憲法の基本理念である国民主権・民主主義,法の支配,人権保障だけではなく,民法の基礎理念である私的自治の原則といった近代法の背景にある根本的な考えが社会に受け入れられていく様子を描き出している。
50年近く前の書籍ではあるが,講演録を元に書かれているのでこんにちでも難なく読めるものである。立憲主義や近代市民法をよりよく理解するために,ぜひ本書を手にとって,その基本的原理の理解に努めてもらいたい。
続編として「近代民主主義とその展望」(1977年)岩波新書がある。こちらもお勧めする。
(髙畑英一郎教授/3F東開架)