[補説]
弘前藩士の長男に生まれた一戸兵衛は、軍人になりたいと出奔同然に上京したが当て所なく、かつて戊辰戦争函館攻略で青森に向かう官軍の参謀が、若干21・22歳の山田顕義という名前で有名であったことを思い出し、大胆にも山田邸を訪問したが、当然門前払いされた。あきらめず数度、思いを文章にして持参、門をたたいて懇願しつづけ8回目で念願がかなって山田と面会できたという。本書簡は、一戸が3回目に山田邸の門を叩くときに志望の動機を認めたものという(『一戸将軍』10頁)。