[補説]

竿鈴(かんれい)は木戸孝允の号。この書簡の話題は、「十四年」以来、「戊午」・「壬戌」の年に起きた出来事に対し、木戸が結局自身何もできなかったと、山田顕義に語り掛けているが、木戸にとって画期となる出来事があった年と捉えると、天保14年(1843)は村田清風(1783~1855)による長州藩の「天保改革」が成果を挙げた年。「戊午」は安政5年(1858)で、木戸や山田の師吉田松陰が「安政の大獄」によって幕府に捕らわれた。「壬戌」は文久2年(1862)で、京都伏見の旅館寺田屋に集合していた過激派志士の薩摩藩士等が、薩摩藩主島津久光の主導で弾圧された「寺田屋事件」であろうか。