山田顕義五言詩 (紙本墨書)
[大意]
俗世間の煩わしさから、やっと逃れてきた
この清らかな夜の楽しみは、いつまでも尽きない
三日月が松の枝に懸り
茶の湯も程よく、魚眼ができてきた
[注]
- 【紫陌塵】
- 都の道路の塵。俗塵。俗世間の煩わしい事柄。
- 【片月】
- 半分以上欠けた月。三日月。
- 【湯候】
- 湯加減。
- 【魚眼】
- お湯が沸騰する前の小さな泡の譬え。
[補説]
署名がないが、山田の筆跡である。また、落款印の上は「山田顯義之印」、下が「空齋居士」で、いずれも山田が使用している印である。『學祖山田顯義漢詩百選』187頁・065詩は、「十二月十五日、遠藤氏茶会席上」の題で「洗来人世熱 清夜娯何限 片月懸在松 湯候欲蟹眼」の五言詩を紹介。さらに、字句に異同がある二種類の詩が残っており、その一つに本詩をあげ、書として洗練されたものであると解説する。また、「遠藤氏」とは、山田の郷里の先輩遠藤謹助であろう。井上馨・伊藤博文・山尾庸三・井上勝と遠藤の5名は英国へ密航し成果を得たことで、「長州ファイブ」と呼ばれる。明治政府では造幣局勤務が長く、明治14年(1881)造幣局長となった。