[大意]

蓼の葉が一面に赤みを帯びて、秋が来るのを急き立てている

庭石を囲むようにびっしりの葉も、よく見れば境目も深くて塵も溜まらない

美味い酒でほろ酔い加減に、作詩の気分も乗ってきた

窓の前はまばらな竹林だが、一雨来たら良い詩が出来そうだ

[注]

【蓼葉】
タデ科の一年草。花は秋に咲く種類が多い。
【泉石】
庭石。山や川の自然な景色のこともいう。
【陶然】
酒に酔い、打ち解けて気持ちが良くなること。
【牕前】
窓の前。

[補説]

澄川拙三は長州藩士。篁坡(こうは)は雅号。天保13年(1842)生まれ。土屋簫海に従学したのち上京し、明治前期の漢詩界の大家大沼枕山(おおぬまちんざん)鷲津毅堂(わしづきどう)等に就いて詩に長じた。司法省判事・検事を歴任、明治15年(1882)大審院検事となった。年齢の近い山田とも詩友であったろう。