[大意]

冬の夜、酒を用意して、親友を迎え

歴史や詩文を評論し合っていると、詩興が湧いてくる

知らず知らずに浄化される、俗塵を脱却した境地は

一つの窓にぽつりと映る、灯火の風情

[注]

【寒宵】
寒い夜。
【置酒】
酒を準備すること。
【良朋】
親友。
【紅塵】
都会の雑踏による土埃。俗世間を象徴する詩語。
【寰外趣】
俗界を逸脱した高雅な興趣。「寰外」は圏外。「趣」は文人同士の愉しみ。
【一牕】
牕は窓の異字体。

[補説]

「空齋詩稿」137頁の一四四に「作間介堂來訪醉餘分韻」の詩題が付いていることから、この詩の第一句の「良朋」が作間介堂(作間正臣(さくままさおみ))(1846~1884)であることがわかる。作間正臣は長州藩士。通称は一介(いちすけ)、介堂と号した。明治初期に太政官の史官となり、明治10年に権大書記官、同17年には元老院議官となっている。詩や書に通じていたという。