貴重書/特別書コレクション
ヴェルツェル文庫
ハンス・ヴェルツェル(Hans Welzel. 1904-1977)は,20世紀におけるドイツの高名な刑法学者であり,かつ法哲学者でもある。ヴェルツェルは,法益侵害と行為者の主観面の点検のみで犯罪の成否を議論していた当時の支配的な刑法理論(結果無価値論)を論難したうえで,これに対抗するべく目的的行為論に立脚した刑法理論を構築した。目的を設定し,目的実現のため行為を統御する行為者像を基礎に据える彼の理論は,行為無価値論とよばれている。こうした行為者像と刑法規範との関わりを考察したうえで,実行行為論をはじめ,因果関係論や正犯・共犯論,故意論,責任論といった刑法学における重要な論点について,結果無価値論に対抗する学説を提唱した。ヴェルツェル文庫には,1930年代から晩年までの間の文献が幅広く所蔵されている。その時期は,ヴェルツェルの刑法理論が熟成され築き上げられた時期と重なる。この文庫に所蔵されている文献を渉猟することにより,彼の理論がどのように形成されていったのかを追考することができるであろう。
Hans Welzel Collection
This collection consists of books that were owned by Hans Welzel (1904-19774), who is known as a criminal law scholar in Germany.