[大意]

かつて長刀をひっさげて、「如何に」と叫んでいた

人の生き方は揺れ動いて定まらないことも論じないで

病に伏している今、あの頃の夢は覚めやすいものだ

天地に誓って、自分が正しかったのかと思うと、ため息も多いものだ

[注]

【世路】
人の世の生き方。世渡り。
【病牀】
病床。
【俯仰】
うつむくことと仰ぐこと。
【乾坤】
天地。

[補説]

聴雨(ちょうう)は、長州藩士杉孫七郎。天保6年(1835)生まれで、山田顕義の先輩であり、生涯にわたり公私ともに親交があった。明治・大正期の官僚で、秋田県令、宮内大輔を歴任後、皇太后宮大夫を長く勤め、明治39年(1906)枢密顧問官兼議定官となった。