- 彫工: 銀次郎
- 画工: 荒川八十八
- 板元: 武川清吉
[補説]
政府高官や官女を描いた錦絵。
豊原国周(とよはらくにちか。1835~1900)は本名を荒川八十八といい、役者絵や美人画、羽子板絵を得意とした浮世絵師。彫り物師銀次郎は、本名浅井銀次郎(1844~1894)といい、彫工銀次郎の号で知られた。板元(出版人)の武川清吉(生没年不詳)は沢村屋と号し、日本橋で営業をしていた地本(大衆本)問屋。明治15年代から、豊原国周、3代歌川広重、河鍋暁斎、小林清親、楊州周延など人気浮世絵師の錦絵を出版した。
描かれた人物たち
本錦絵は、名前とともに描かれている人物が男女合わせて26名と多くなっているが、人選の理由やテーマは分からない。時は明治15年、描かれている人物たちを見てみよう(右端の女性の名前は不明,人名に間違いもある)。
中央には明治天皇と皇后美子(昭憲皇太后)
6名の女官は、天皇・皇后に仕える中でも側近に近い、典侍・権典侍である。
- 四辻清子(典侍)
- 万里小路幸子(典侍)
- 高倉寿子(典侍)
- 柳原愛子(権典侍。大正天皇生母)
- 植松務子(権典侍)
- 千種任子(権典侍)
明治政府の要職者20名が登場。( )内は明治15年当時の肩書
- 三条実美(太政大臣)
- 有栖川熾仁(左大臣・陸軍大将・議定官)
- 岩倉具視(右大臣)
- 大木喬任(参議・司法卿)
- 山県有朋(参議・陸軍中将・参事院議長・議定官)
- 伊藤博文(参議・陸軍中将・参事院議長・議定官)
- 西郷従道(参議・陸軍中将・議定官・農商務卿)
- 井上馨(参議・外務卿)
- 山田顕義(参議・陸軍中将・議定官・内務卿)
- 松方正義(参議・大蔵卿)
- 大山巌(参議・陸軍中将・陸軍卿・議定官)
- 川村純義(参議・海軍中将・海軍卿・議定官)
- 福岡孝悌(参議・文部卿)
- 佐々木高行(参議・工部卿)
- 黒田清隆(内閣顧問・陸軍中将)
- 東伏見嘉彰(議定官・陸軍中将)
- 伏見貞愛(議定官・陸軍歩兵大尉)
- 榎本武揚(議定官・海軍中将)
- 土方久元(議定官・内務大輔)
- 曽我祐準(陸軍参謀本部次長・陸軍少将)
[参考]
- 日本歴史学会編『明治維新人名辞典』吉川弘文館 昭和56年
- 児玉幸多他監修『日本史総覧補巻Ⅲ(校訂明治官員録)』新人物往来社 昭和61年
- 小田部雄次著『ミカドと女官 菊のカーテンの向う側』恒文社 平成13年