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TOP推薦図書紹介 推薦図書紹介図書委員からの推薦図書 2017 Vol.4Hiroshi Mizuta『Adam Smith’s Library. A Catalogue』Oxford University Press,2000経済学の父と称されるアダム・スミス(1723-1790)がかつて個人所蔵していた数多くの文献は,彼の死後,数奇な運命をたどることになる。著者の水田は,スミス研究者の第一人者でもあり,分散したアダム・スミス旧蔵書の現在の所在を本書で明らかにした。本書は,スミスの思想形成の経緯を追究している研究者にとって,非常に重要な資料の一つとなっている。本書にはもちろん,法学部図書館が所蔵している次のスミス旧蔵書4点,計26冊が紹介されている。先日も,スミスが蔵書にどのような書き込みをしていたのかを調査しているグラスゴー大学のクレイグ・スミス先生が法学部を訪問し,図書館が所蔵しているスミス旧蔵書を閲覧している。 桧垣伸次著『ヘイト・スピーチ規制の憲法学的考察:表現の自由のジレンマ』法律文化社2017年本書は,ヘイト・スピーチ規制に関する憲法的な問題を検討したものである。日本国憲法21条は「集会,結社及び言論,出版その一切の表現の自由は,これを保障する」と規定している。言うまでもなく,憲法で保障されている表現の自由は,民主国家にとって極めて重要な権利である。大日本帝国憲法29条は「日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ言論著作印行集会及結社ノ自由ヲ有ス」と規定されていた。つまり表現の自由を弾圧する法律を制定することは,当時の日本政府に許されていたのである。その結果,日本にどのような悲劇が起きたかは,歴史が証明する通りである。故に表現の自由を規制する法を制定することは,許されないことであり,たとえ必要な場合があっても,どのような表現をどのような理由で規制するのかを,明確にできない限り違憲となる,と考えるのが一般的である。ところが近年ヘイト・スピーチという現象が問題になった。これはある一定の民族等に「殺せ」とか「ゴキブリ」と罵る嫌悪表現を投げかける行為のことである。そんな表現は規制されても良いのではないか?その通りだが,保障されるべき主張と,罵りでしかない嫌悪表現と,明確に区別できるだろうか。表現の自由って一体何なのか,本書を読んでじっくり考えてもらいたい。 小林直樹著『憲法第九条』岩波書店(岩波新書) 1982年著者はかつて東大法学部で憲法を講じる護憲派の旗手だった。推薦者は高校二年の時に同じ著者の『憲法を読む』(1966年・岩波新書)を読んだ。東大教授が岩波新書で説く憲法論は,片田舎の高校生にとっては神の言葉の如きものだった。ただその言葉のそこかしこに得体の知れない違和感を感じてはいた。その後,大学院生の頃にこの『憲法第九条』が出た。手元にあるこの初版本には,万年筆であちこちに傍線が引かれている。 弥永真生著『法律学習マニュアル(第4版)』有斐閣2016年法律の学習は高校まで学んできた学習方法とは違っており,1年生の後期や2年生になって専門の法律科目を学修するようになって急に面白くなくなったとか,成績が今一つかんばしくなくなり,法律の学習が嫌になってくることがあります。このようなことをなんとか解決する必要があります。学生たちの悩みは,①法学部に入学して,法律の勉強をどのようにしていったらいいのか良く分からない,②ゼミナールでどのように発表し,どのようにレジュメを作ったらいいか分からない,③4年生では論文を書くにあたって資料の収集や論文の組み立てや引用や注についてどうするか分からない,④試験に際して法律の答案をどのように書いていったらいい答案が書けるのか知りたい等です。これに答えてくれるのが本書なのです。第4版が貸し出されている場合にはそれ以前の版でもかまいません。それらも貸し出されている場合には,法学教室の127号~138号,211号~232号に「What’sリーガルマインド?」および「法律学のマニュアル」が掲載されていますからそれを読んでみてください。これをまとめ,その内容をアップ・デートしたのが本書なのですから。騙されたと思って本書を一度読んでみてください,必ず得るところがあります。 |